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名古屋高等裁判所 平成元年(行コ)8号 判決

名古屋市昭和区汐見町一一八番地

控訴人

中北歌子

右同所

控訴人

中北智久

右両名訴訟代理人弁護士

佐治良三

太田耕治

名古屋市瑞穂区瑞穂町字西藤塚一番地四

被控訴人

千種税務署長事務承継者昭和税務署長 手嶋英夫

右訴訟代理人弁護士

浪川道男

右指定代理人

山下純

金川裕充

間瀬暢宏

右当事者間の贈与税決定処分等取消請求控訴事件について、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件控訴をいずれも棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

(当事者双方の求めた裁判)

一  控訴人ら

1  原判決中控訴人らに関する部分を取り消す。

2  被控訴人(千種税務署長)が昭和五〇年一月一四日付でした、

(一) 控訴人中北歌子の昭和四五年分贈与税につき贈与税額を金一六万四二〇〇円とした更正(但し、贈与税額金三万六四〇〇円を超える部分)及び無申告加算税額を金一万二七〇〇円とした賦課決定の各処分、

(二) 控訴人中北智久の昭和四四年分贈与税につき贈与税額を金一六九万三一〇〇円とした更正(但し、贈与税額金一二六万五三〇〇円を超える部分)及び無申告加算税額を金四万二七〇〇円とした賦課決定の各処分、をいずれも取り消す。

3  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

との判決。

二  被控訴人

控訴棄却の判決。

(当事者双方の主張)

当事者双方の事実上及び法律上の主張は、次に付加する外、原判決の事実摘示中控訴人らに関する部分と同一であるから、ここにこれを引用する(但し、原判決二四枚目裏六行目の「別表四」を「別表五」に、同六七枚目表六行目の「五〇パーセント超」を「五〇パーセント以上」にそれぞれ改める)。

(控訴人ら代理人の陳述)

比準価額の計算について

一  訴外会社の昭和四一年一月から同年九月三〇日までの事業年度の利益の計算については、未収補償金五四三四万二〇〇〇円が、会計処理方法の変更による利益の重複であるから、すでに減算されている金三〇八〇万円を控除した金二三五四万二〇〇〇円をさらに控除すべきである。

二  したがって、昭和四二年三月一一日を課税時期とする計算については、重複減算前の一年間の利益が、金一億七三〇〇万四〇〇〇円であるから、これから金三〇八〇万円と金二三五四万二〇〇〇円の合計金五四三四万二〇〇〇円を差し引いた金一億一八六六万二〇〇〇円が正確な一年間の利益となり、一株あたりの利益は金一一八円となる。

三  また、昭和四二年九月一二日を課税時期とする計算についても、重複減算前の一年間の利益が金八四四一万一〇〇〇円であるから、これからさらに金二三五四万二〇〇〇円を差し引いた金六〇八六万九〇〇〇円が正確な一年間の利益となり、一株当たりの利益は金六〇円となる。

(被控訴代理人の陳述)

控訴人らの右主張は争う。

(証拠関係)

本件記録中の原審及び当審における証書目録並びに原審における証人等目録の記載と同一であるから、ここにこれを引用する。

理由

一  当裁判所も控訴人らの被控訴人に対する本訴請求は、いずもれ失当としてこれを棄却すべきものと判断する。その理由は、次に付加・訂正する外、原判決の理由説示中控訴人らに関する部分と同一であるから、ここにこれを引用する。

1  原判決六九枚目裏六行目の「三ないし六」の次に「、いずれも原本の存在及びその成立に争いのない甲第一二〇、一二一号証」を加え、同七二枚目裏三行目の「昭和三九年三月一八日」を「昭和三八年八月一〇日」に、同四行目の「一万六〇〇〇株」を「一万五〇〇〇株」にそれぞれ改め、同七八枚目表三行目の「(いわゆる」から同五行目の「参照。)まで同末行の「贈与者」から同裏五行目の「1項(一)(3))し、」までをいずれも削り、同七九枚目表一行目の「昭和四二年三月一一日」の次に「同年九月一二日、」を加え、同八行目の「前記のとおり、」から同九行目の「争いがなく、」までを削る。

2  原判決八六枚目裏三、四行目の「、有限会社法四一条、同法六三条」を削る。

3  原判決九三枚目裏一〇行目、及び同九四枚目表六行目の各「別表四」をいずれも「別表五」に、同一〇一枚目裏三行目の「甲第八六号証」を「甲第九一号証」にそれぞれ改める。

4  原判決一〇二枚目裏五、六行目の「別表五」を「別表六」に、同一〇六枚目裏三、四行目の「被告らの主張2項」を「被告らの主張3項」に、同一〇七枚目表三行目の「別表六」を「別表七」にそれぞれ改め、同一〇九枚目裏三行目と四行目の間に、行を変えて次のとおり加える。

「この点に関して、控訴人ちは利益重複の点を減算して、昭和四二年三月一一日を課税時期とする計算については、一年間の利益金額を、金一億七三〇〇万四〇〇〇円から金三〇八〇万円と金二三五四万二〇〇〇円の合計金五四三四万二〇〇〇円を差し引いた金一億一八六六万二〇〇〇円とすべきであり、また、昭和四二年九月一二日を課税時期とする計算については、一年間の利益金額を、金八四四一万一〇〇〇円から金二三五四万二〇〇〇円を差し引いた金六〇八六万九〇〇〇円とすべきである旨主張する。

前顕項第一〇四号証、原本の存在及びその成立に争いのない甲第一一九号証、並びに弁論の全趣旨によると、名古屋中税務署長は、訴外会社の昭和四〇年一〇月一日から昭和四一年三月三一日までの事業年度(以下「四一年三月期」という)、及び昭和四一年四月一日から同年九月三〇日までの事業年度(以下「四一年九月期」という)の法人税の更正をなすに当たり、訴外会社が従前製薬会社からの補償金を、現金主義により経理していたのを、発生主義に改めさせるため、四一年三月期の法人税につき、未収補償金として金三〇八〇万〇〇七六円を加算し、また、四一年九月期の法人税につき、前期で加算した金三〇八〇万〇〇七六円を減算したうえ、新たに未収補償金として金五四三四万二五一八円を加算したことが認められ、右認定に反する証拠はない。

そして、四一年九月期後の事業年度において、未収補償金に関する経理方法の誤りに基づく更正がなされたことにつき主張立証がないことからすれば、訴訟会社は四一年九月期後においては、発生主義によって未収補償金を経理しているものと推認される。

右認定の事実に基づいて判断すると、補償金の整理方法を現金主義から発生主義に改めた場合、ある事業年度において現に収受した補償金と単に債権として発生したにすぎない未収補償金とをともに計上せざるを得ないところ、事業を継続している法人の法人税の場合では、結局いずれの事業年度の所得金額として計算したうえ課税がなされるかの問題にすぎないが、本件の場合のように、株式の評価をなすに当たっての一株当たりの利益金額を計算する場合には、現金主義による補償金と発生主義による未収補償金とを同時に計上すると、当該事業年度の利益金額が不当に高額になるから、これを現金主義か発生主義かのいずれか一方に改める必要が生じる。この点に関して原判決は、四一年三月期について発生主義によって利益金額を算定しようとしても、その前期の期末未収補償金の金額が証拠上不明であるため、発生主義による未収補償金三〇八〇万円を減算して、現金主義によって利益金額を算定したのであり、一方、四一年九月期においては、前記の未収補償金の金額が金三〇八〇万円余と明らかであり、前記更正においてすでに右金額が減算になっているから、控訴人ら主張のような減算をしなくとも、発生主義によって利益金額の算定がなされていることになり、そこには利益金額の重複が何ら存しない。そして、昭和四一年一〇月一日から昭和四二年三月三一日までの事業年度についても、確定申告の段階においてすでに発生主義により所得金額の計算がなされているから、同様に控訴人ら主張のような減算をしなくとも、そこには利益金額の重複が何ら存しない。

してたがって、控訴人らの右主張は、採用することができない。」

原判決一〇九枚目裏四行目の「しかし、右の」を「もっとも、前記の」に改める。

5  原判決一一八枚目裏末行の次に、行を変えて次のとおり加える。

「そして、本件処分が昭和四四、四五年分の贈与税に関する処分であるうえ、前示のとおり、租税行政の公平性ないし一貫性から、ある程度画一的な基準を設定する必要があることに鑑みれば、いずれも原本の存在及びその成立に争いのない甲第一一五乃至第一一八号証によっても、右判断を覆することができない(殊に、日本公認会計士協会近畿会税務委員会が、類似業種比準方式により非上場株式の評価をする場合、非流通性レシオ三〇パーセントの外に、さらにリスクレシオ三〇パーセントを調整減価すべきであるとの意見書を公表したのは、平成元年六月三日のことである)。」

6  原判決一二二枚目裏七行目の「昭和四五年中」を「昭和四四年中」に、同一二八枚目裏末行の「別表一八」から同一二九枚目表三行目の「一六」までを「別表一八の一、二」にそれぞれ改める。

二  そうすると、右と同旨の原判決は相当である。

よって、本件控訴をいずれも失当して棄却することとし、控訴費用の負担について行訴法七条、民訴法九五条本文、九三条一項本文、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 土田勇 裁判官 水野祐一 裁判官 喜多村治雄)

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